勉強また勉強

 2010年3月に、7年間勤めた、放送大学福岡学習センターの客員教員を任期切れで辞した。時々の学修相談などを担当しながら、年に数回面接授業を担当した。放送大学の学生は、放送による科目の他、各県毎にある学習センターでの生の面接授業でも一定数の単位を取得せねば卒業できない仕組みになっており、原則週末土日二日間の集中面接授業を受けることになる。

 1回の面接授業では20-30名程度の学生が集まる。見渡してみると、高校を卒業してそのまま入学してきた人から70代で体の不自由そうな方まで、様々な方がおられる。私の担当する面接授業は英語およびその周辺がテーマなのだが、英語力においても、はるか昔の中学卒業以来全く縁がないという方から、ある程度話せる人まで実に様々である。そういうクラスなので、英語の背景文化や英語のメカニズムなどについての講義になることが多い。こころがけたのは、英語の実力の高低にかかわらず、聞いてためになる授業である。

 はっきり言うと、クラス「全体」としての英語力は私の本務校の学生に比べると不足していることは否めない。しかし、学問を吸収したいという熱意があり、とにかく教員の話をよく聞く。それもそのはずで、多くの学生さんが、単なる履歴書整備ではなく、学びたいというほとばしるような意欲をもって入学してくるため、授業に臨む態度は最高なのである。

 他の大学では社会人枠で入学するような年齢の学生さんが多いのだが、社会での経験を踏まえ、学問をすることの悦びを改めて見いだして入学して来られる。放送での授業が中心なので、仕事を持ちながらでもやっていけるし、費用も他の大学に比べて安い上、入学試験もない。敷居が高くない分入りやすいのだが、卒業する方の割合は他の大学では考えられないほど低い。しかしそれでも、一度卒業しても再度入学して以前とは別のコースを取る人もいる。中には5つある全てのコースを卒業して表彰される人もいるくらいだ。

 こうした環境の中にいて、当の放送大学の教職員が学生になるケースも珍しくない。私も生涯一学徒の思いを持つようになった。この7年間の幸せに感謝している。

(Y.S.)
(2010/04/21)