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辺野古埋立事業に対する声明

名護市辺野古埋立事業における日本政府の行政不服審査制度の濫用に抗議し、同事業の中止と普天間基地の即時無条件返還を求める


日本科学者会議の以下の組織は,2018年11月2日,声明「名護市辺野古埋立事業における日本政府の行政不服審査制度の濫用に抗議し、同事業の中止と普天間基地の即時無条件返還を求める」を発表しました.
日本科学者会議事務局
日本科学者会議九州沖縄地区会議
日本科学者会議沖縄支部
日本科学者会議平和問題研究委員会

声明「名護市辺野古埋立事業における日本政府の行政不服審査制度の濫用に抗議し、同事業の中止と普天間基地の即時無条件返還を求める」
 国土交通大臣は、10月30日、名護市辺野古への米軍新基地建設のための埋立事業について、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づいて提出した執行停止申立てを認めて埋立承認撤回の執行停止決定を行った。
 行政不服審査法は、公権力の行使に対して国民(私人)の権利利益を救済するためにある法律である。「国の機関」である沖縄防衛局が、「国民」のための制度である行政不服審査制度を使って沖縄県の行った処分を覆そうとすることは、制度的濫用であり、法治主義の原則や立憲主義からして絶対に許されない。事業者である沖縄防衛局は、防衛省の一機関であり、キャンプ・シュワブ沿岸の米軍提供水域内で埋立工事を行うには日米合同委員会に提起して合意を得る必要があるから、「私人」と言い得ないことは明らかである。
 また、行政不服審査制度では審査の公正性の確保が要件となる。今回のケースでは、政府の一機関である沖縄防衛局の審査請求に対して、同じく政府の一官庁である国土交通省が審査を行うので、そもそも公正性・中立性が確保できない。国は、地方自治法に基づいて是正の指示をすることなどが本来のあり方であろう。だが、それでは判決が出るまで工事を停止せねばならず、かつ国の主張通りとなるとは限らないので、工事を速やかに強行したい政府の方針に則して、国土交通大臣は、沖縄防衛局が「私人」になりすますことを許容して、行政不服審査法に基づく執行停止決定をしたのである。これは法や制度の濫用以外の何物でもない。
 今回の国土交通大臣の執行停止決定は、前述したように、権利救済のための申立てではなく、新基地建設を推し進める国家的利益を実現するために、自治体(沖縄県)の民主的判断(民意)に対して国が関与するための裁定的関与といえる。公有水面埋立法上の埋立承認処分やその撤回は自治体の事務であるが、都道府県知事の行った埋立承認やその撤回などの処分が政府の意に反する場合、行政機関が私人になりすまして本制度を用いれば必ず自治体の処分を覆せることになる。これは、日本国憲法の柱の一つである地方自治を、国の従属下に置く暴挙であり、許されない。しかも、辺野古新基地建設の是非を最大争点として沖縄県知事選挙が行われ、自治体内の民主主義が誰の目から見ても機能している中で、国土交通大臣は撤回の効力を止める決定をしたのである。沖縄防衛局の行為は、民主主義を無視し、憲法の保障する民主的地方自治(住民自治)をも踏みにじる暴挙である。
 国交大臣の決定を受けて、新基地建設のための埋立工事が再開されるならば、それは、法治主義の原則や立憲主義、さらに民主的地方自治にもとる一連のやりとりを根拠として、多くの違法性を積み重ねて行われるものである。また、土砂が投入されれば当該区域の海の環境は回復不能に破壊されるので、事後に沖縄県の承認撤回の判断が正しかったことが司法の場などで証明されたとしても、その意味をなくしてしまうものである。国土交通大臣の執行停止決定は、憲法原則の観点からみても、また、後述するように自然の生態系の保護などという事柄の性質から言っても、断じて容認できないことである。
 国家が公権力を行使するには法律の根拠が必要であり、また、法律が認めた範囲でのみ国家は活動できるという「公権力不自由の原則」と、個人(私人)は、法律(公権力)により禁止されない限り何をしても自由であるという個人の「自由の原則」は、近代社会の大原則である。ところが、公権力の行使主体たる国家が、私人になりすまして「公権力不自由の原則」の縛りから解き放たれ、「自由の原則」を獲得してしまうと、国家は強権的国家に変容してしまう。このように、国家が、法を個人の自由を守るものでなく、国家利益を追求する道具に変質させる手法は、辺野古のみならず原発問題など他の国策を実行する際にも、現れる問題である。すなわち、辺野古埋立をめぐる今回の政府の暴挙は、沖縄の地域問題、新基地建設をめぐる技術的問題ではなく、日本全体の法の在り方や国の在り方に関わる問題である。この観点からも、今回の政府の暴挙は断じて看過できない。
 国土交通大臣が撤回の効力を止める決定をしたところで、沖縄県知事が撤回の理由として示した問題点は何ら解消されていない。第一に、埋立事業は生物多様性のホットスポットである辺野古・大浦湾海域で行われるので、環境保全措置が十分に講じられないまま埋立が再開されれば、生態系が回復不能に破壊されてしまう。第二に、事業区域内に活断層や厚い軟弱地盤があることから、工法の変更、滑走路や航空支援施設などの飛行場・軍事基地の主要な設計、埋立に要する土砂の量、工期、予算などの大幅な変更は不可避であり、工事を再開させても現行計画のまま事業を完成できるものではない。第三に、計画通り航空基地が完成すれば、沖縄高専や久辺小中学校といった学校施設を含む複数の建築物が、米国の基準に反した状態に置かれる。第四に、有事に那覇空港も提供することを沖縄県が合意しない限り普天間基地は返還できないとの米国の姿勢に変わりはない。これらは、いずれも日米安保体制や新基地建設への支持・不支持に関係なく、必ず解決されなければ新基地建設の意味を失わせる問題である。したがって、国土交通大臣が言明した決定の理由である、普天間飛行場の危険性除去や騒音などの被害防止の早期実現、「日米間の信頼関係や同盟関係」は、このまま工事を再開しても実現できないのである。逆に、日米同盟を理由として暴挙を敢えて行う、政府の理不尽さが鮮明である。
 以上のことから、私たちは次のことを求める。
(1) 防衛省・沖縄防衛局は、撤回処分についての審査請求と執行停止申立てを撤回し、沖縄県知事の決定に従うべきである。
(2) 国土交通大臣は撤回処分の執行停止決定を取り消すと共に、撤回処分についての審査請求を却下すべきである。
(3) 日米両政府は、沖縄県民の意思をふまえ、辺野古新基地建設を断念し、普天間基地の即時無条件返還すべきである。

以上