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医療従事者の新型コロナウイルス感染予防対策

医療従事者の新型コロナウイルス感染予防対策



2020年4月8日
二宮 清(洛和会音羽病院 医師)


 2003年の世界的SARSコロナウイルス感染流行時に、福岡市のSARSコロナウイルス感染対策の最前線で関与した経験を踏まえ、現在実施している私自身のCOVIT-19コロナウイルス感染予防対策を記載します。一部分でも参考になれば試して下さい。
 現在、ほぼ全世界に広がりつつあるCOVIT-19コロナウイルス(以下ウイルスと略す)への獲得免疫(感染やワクチン投与で備わった疾患特異的で強力な抵抗力)は誰も持っていない中で、感染すると20%は重症化し、医療体制の整備如何によりますが、その内の数%は死亡することになります。このウイルスに対する基本方針は、60歳代後半である私の年齢を考慮するならば、ワクチンや薬剤ができるまで①ウイルスに感染しない、もし②感染したら人にうつさない、と同時に③自然免疫(出生時から備わっている疾患非特異的で弱い抵抗力)でウイルスを排除できるように普段から準備する。など皆さんに容易に理解してもらえると思います。上記の項目に沿って述べていきます。

①ウイルスに感染しない
 感染者のウイルスを含んだ分泌物を、直接ないし間接的に非感染者が受け入れることで感染が成立するので、分泌物を避けるのが基本です。人体への侵入門戸は、身体から外に開いた穴(目、鼻、口、陰部)の粘膜です。 まず、咳やくしゃみ、会話で発生するしぶきや唾液などの大きな粒子が、目、鼻、口の粘膜に直接沈着するのを防ぐこと、マスクの装着無しだと相手との距離を2m隔てるなどの密接を避ける。同時に、咳やくしゃみで微小粒子=エロゾルが発生します。換気の悪い密閉空間などの特殊な環境では3時間程度大量のエロゾルが漂い、非感染者がウイルスを含むエロゾルを吸い込むことで感染が成立すると報告されています。換気の悪い密集・密閉は避ける事が基本ですが、換気に気を付ける事が大切です。車内や室内では、扇子で自分の顔の前辺りを扇ぐ個人的換気も実施しています。次に、入念な水洗い、石鹸併用はなお良く、さらに消毒剤を重ねると完璧ですが、手荒れが起きるので水洗を繰り返すのが簡便で実用的です。細胞外で増殖能力の無いコロナウイルスが生活環境で最も長く検出されるのは最長3日間プラスチック上、その他の素材上ではこれより短いと報告があることから、手指消毒の重要性がわかると思います。洗う前の手指で目、鼻、口の粘膜に直接触れない、もし触れたら、拭う、洗う、うがいする これらの用途のため、濡れティッシュ、消毒用ティッシュ、うがい用にペットボトルを持ち歩くなど。手指以外で外部から家の中へウイルスを持ち込むのは、身体表面の頭髪、皮膚、衣服などへの付着を介してである。直ちに洗える部位は洗い、一番外側に羽織る、クリーニングでしか洗えない衣服などは、脱いだ後に通気の良い場所に干す。仮にウイルスが付着していても消えるまでの最長3日間を経ると安全なので、3から4日程度のローテーションを組んで交換しています。

②感染したら人にうつさない
 感染しても発病する2日前からウイルスの排出が始まり、症状が消えて後8日間、便中では約1か月程度ウイルスの排出が持続する。若年感染者は、発病時の症状が軽微か無症状でウイルスをばらまき、周囲に感染を起こすことになる。しかし、現在感染しているか否かの一応の診断になるPCR検査は、医師指示があり患者が希望しても行政などの選別にかかり、受けることは容易ではありません。従って、特に症状が軽微であっても自分が感染者かどうかを知ることができません.そこで、「とにかく感染しない、すでに感染していても他人にうつさない」など自らの両方の場合を想定すれば、常に社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)を保つ事により、「感染を受けず、拡大しない」ことが可能になります.この時期、家庭内での体温測定は必須です。自分が発熱したらマスク着用、家族と2m以内に近づくなら相手もマスクを着用してもらう、タオルなどの共用は避ける、食事時間をずらす などが解熱時まで必要です。

③自然免疫でウイルスを排除する
 COVID-19に対する獲得免疫を誰も持っていませんので、ワクチンや特効薬の無い状況では自然に備わった個人免疫でたたかう以外に方法はありません。普段から免疫力を高めるため規則正しい生活をおくることが大切です。過度の飲酒や喫煙習慣は止める必要があります。特に喫煙はウイルス肺炎の重症化を招く明らかな因子です。十分な睡眠も免疫力を高めまる効果があります。その他、詳細は示しませんが、食物成分中に免疫力を高める物質があることが知られています。適度の運動、入浴により体温を上げることで免疫力が高まる報告もあります.逆に過度のストレスは免疫力を低下させるので、ストレスを溜めないことも重要です。
 最後に、医療現場はマスク不足が一向に改善せず配給制となっています。仕方無いので、使用後のマスク表面に水滴を垂らし、水漏れが無いのを確認してから、裏表に洗剤や石鹸を付け軽く洗って乾かし、再利用するようにしています。ウイルスとの戦いは自らの創意工夫を発揮し、ワクチンや薬剤ができるまで粘りましょう。

新型コロナウイルス感染症拡大防止に関しての提言

新型コロナウイルス感染症拡大防止に関しての提言



2020年4月6日に「新型コロナウイルス感染症拡大防止に関しての提言」を日本科学者会議福岡支部幹事会で決定しました.本提言は,国,福岡県,福岡市および市民に対する提言であり,明日早朝に提出されます.(EM)
4月7日,本提言は,午前中に首相官邸ホームページから安倍晋三首相へ提出し,午後からは福岡市役所2階の広聴課まで出向き高島宗一郎市長へ,さらに福岡県庁8階の秘書課で小川洋県知事へ提出しました.その後で,県政記者クラブにこれらのことをプレスリリースしました.(EM)

提言のpdfファイル

新型コロナウイルス感染症拡大防止に関しての提言



2020年4月6日
日本科学者会議福岡支部幹事会(注1)


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について,4月5日現在,世界全体でその患者数は110万人を越え,死者は6万人を上回る感染爆発が進行し,多くの感染都市では医療崩壊が生じています.この感染症に有効な医療は未だ確立していません.日本は今,感染爆発の危機に直面していますが,政府は全世帯に布マスクを配布するといった,科学的には有効性が疑われる場当たり的な「対策」を行う一方で,感染拡大を防止するための納得のいく明確な方針・対策を示し得ていません.感染拡大を抑制し一人でも多くの生命を救済する具体的な対策をとることが緊急に必要です.感染爆発を前にして国および地方自治体および国民に対し,以下のような感染拡大防止の明解で有効な対策を早急にとることを求めます.

①<感染拡大防止のために社会活動や移動の強力な制限を> COVID-19に対する有効な治療法がない今日,医療管理下における感染者の適切な隔離は当然のことです.現在,PCR検査を行っていない多くの人々は感染者であるかどうか判りません.人々の社会的行動を制限する以外に,感染拡大防止の有効な手立てはありません.感染拡大防止には社会活動や移動の強力な制限が必要です.私たち市民一人ひとりも不要不急の外出を控え,やむをえず外出する際には「社会的距離」(social distancing,他人と約2 m離れること)を保つことが大切です.

②<検査体制の拡充と感染者隔離体制の構築を> COVID-19に対するPCR検査や抗体検査の体制を拡充して,早急に検査数を上げること,さらに無症状感染者や軽症者はホテルなど適切な宿泊施設を自治体が確保しそこに収容することが感染拡大防止に不可欠です.無症状感染者や軽症者だからといって自宅に帰すということは,決してやってはなりません.PCR検査は自治体主導で推進し,発熱外来も自治体のもとに設置するのが合理的です.

③<重症者に対する集中治療体制の早急な拡充を> 重症者を治療する集中治療施設(ICU)を早急に拡充することが必要です.人工呼吸器や人工心肺装置ECMOを含む先端医療機器を早急に増産し,それに見合う医療要員(医師,看護師,検査技師など)を集中配備することも必要です.国は,感染者用ベッドの確保とともに,要員確保・医療物資確保・医療者の感染防止などのための充分な財政支援策を大胆にかつ速やかに実施すべきです.

④<中長期的な感染拡大防止対策と経済補償を> 国は,少なくとも数か月から半年という中・長期にわたる感染拡大防止策を立てる必要があります.多くの業種で長期の休業になる可能性があります.この休業には,事業主や従業員に対する補償が欠かせません.国は大胆な補正予算を組み,自粛要請に伴う損失を速やかに補償することが必要です.

⑤<緊急事態宣言による言論統制は不可> 緊急事態宣言の下では「事実報道」を旗印に政府による報道機関への報道干渉が増えることが懸念されています.このような干渉は言論統制に繋がるものであり,民主的制度の下では決してあってはならないものものです.

⑥<危険な原発の稼働停止を> 現在,9基の原発が稼働中(一時停止中3基)ですが,それらの施設で感染爆発が起きれば,事故発生時の適正な対応が取れないリスクがあります.少なくともコロナ禍が収まるまで原発は停止すべきです.

以上


〔注1)日本科学者会議は,研究分野を越えて,日本の科学の自主的・総合的な発展と科学者としての社会的責任を果たすことを目指す,科学者を中心として技術者・医師・弁護士などからなる学術団体です.