「レベル3の汚染水漏れ」が教えること

 東京電力(東電)は8月19日,汚染水を貯蔵する地上タンクの付近で,毎時100ミリシーベルトと放射線量の高い水たまりを発見したと発表した.原子力規制委員会は,同日,この事故を国際原子力事象評価尺度(INES)に基づいてレベル1(逸脱)と評価した.しかし,8月28日になって,原子力規制委員会は,「(福島第一原発)事故と切り離した評価も可能」という国際原子力機関(IAEA)の指導のもとに,汚染水漏れ事故をレベル3(重大な異常事象)にまで引き上げた.

 毎時100ミリシーベルトという放射線量は,1分間その中にいれば1年間の許容限度を優に超える量である.「重大な異常事象」であることに違いない.しかし,この汚染水漏れ事故を,福島第一原発事故と切り離して,個別事故としてレベル3とみる見方は正しいのであろうか.

 タンクから漏れたのは高濃度のストロンチウム90などを含む汚染水である.そもそも,この汚染水は原発事故で溶融した核燃料を冷やすために注入している水が,放射性物質を溶かし込みながら,原子炉建屋地下やタービン建屋地下に流入したものである.水をかけると汚染水ができるなら,水をかけるのをやめたら良さそうなものであるが,それは出来ない.注水が34時間停止すると燃料が高温になり再び損傷すると考えられている.今後も数年間は注水して冷やし続けなければならないのだ.明らかに3.11から始まった原発事故は,収束しておらず継続している.

 漏れたタンクは,ボルトで組み立て,接合部の間に耐用年数5年のゴム製パッキンをはさみこむ円筒状の鋼鉄製のものであり,直径12メートル,高さ11メートルで容量は約1000トンである.漏れは,接合部のゴム製パッキンの部分から生じたと考えられているが,いまだにどこから漏れたのかが特定されていない.5年はもつと考えられていたものが,2年しかもたなかったことになる.東電が,溶接型でなくボルト型を採用したのは,短時間で増設されるからであり,ステンレス製でなく鋼鉄製を採用したのは,コストがかからないからである.このタイプのタンクは敷地内に350基もある.今回と同じような汚染水漏れが,ほかのタンクでも次々に起きる危険性もある.

 汚染水は1日400トンのペースで増え続けている.東電は,現在の貯蔵可能タンク容量39万トンを2016年度までに80万トンまで増やす計画という.今回のオリンピック招致演説で,安倍首相は「国が責任をもつ」と宣言した.その中には,当然,汚染水漏れを起こすタンクの手当も含まれる.今回の「汚染水漏れ」事故がわれわれに教えることは,レベル7の福島原発事故は収束してはいないということである.そして大切なことは,「原発事故収束宣言」を明確に撤回したうえで,東電を破綻処理し,事故収束にオールジャパンで全力を挙げ,その間は原発再稼働および他国への原発輸出は控えることであろう. 


 (E.M./2013.10.16)