九大レンタルラボラトリー事情 レンタルラボに入居して想うこと

 私は現在、箱崎地区のレンタルラボラトリーに入居して実験室を借りて3年目になる。大学運営にも詳しい文教委員の国会議員と2年前に話す機会があった際、大学内レンタルラボの話をしたが、議員には初耳の話でイメージができないようだった。レンタルラボの現状を学内外の方に広く知っていただければと願っている。


 1980年代末から90年代にかけて大学発ベンチャーブームが起き、さらにはプロジェク型研究の増加を受けて、支援研究施設としてレンタルラボが大学内に作られた。科学研究費補助金や外部研究資金などを活用して、実験室や研究室を整備・運営する仕組みである。九大には建物全体がレンタルラボであるのは伊都地区を除いて各地区にあり、合わせて9つある。スペースとしてのレンタルラボは上記以外にも数多くあるものと思われる。入居資格は研究資金を獲得している学内研究者や大学研究者と共同研究を行う民間企業で、入居には審査がある。基準賃料は10,000円/m²/年、使用期間は3年限度と決められている。水光熱費、電話代、諸経費については入居者が負担する。


 文科省や大学側のセールスポイントは施設の戦略的活用と効率的活用を図り、スペースをレンタルして、スペースチャージ料を取ることで施設運営にコストマネジメントを導入し、全学利用スペースとしてトップマネジメントができることであるという。入居者側にとって魅力的なことは、民間の賃貸料と比べて比較にならない低コストで研究室を借りることができる点である。


 問題点は、(1) 流動的スペースであるので、自分らの研究に見合った実験室環境に仕上げるのに、多大な設備投資を自己負担しなければならないこと。(2) 設備投資をしても最長で3年契約であり、退去する際にはまた多大な撤去費用の自己負担が発生すること。(3) 設備費を抑制した場合にはタコ足配線や換気不足などになり、安全衛生管理上の問題が生じる。(4) 建物が新築されて10年前後の建物に入居しているので建物の保守・管理費が今は多くはかからないが、建物が老朽化した時には大規模改善補修の費用はどこが計上して管理してくのか、学部枠による縛りがないだけに責任体制が不明瞭ではないのか。(5) 学内には入居目的が厳しく問われる所や使用期間が1年とするレンタルラボがあり、レンタル空間だけで実験室の基礎的施設が整えられていないために居室にしかならない箇所もあり、空室のままのところもある。(6) 何よりの問題点は、獲得する競争的研究資金がなくなると、退去しなければならないことである。

 冒頭で私のレンタルラボ生活が3年目だと書いたが、レンタル契約終了期間が迫っている。今後、実験研究スペースがこのまま確保できるのか未定であり、身分(助教)の任期制にもサインしているため、不安で不安定な日々が続く。

(2010.11.25)