飯田・伊東論争
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知人から2人の論争のまとめを勧められて取り組んだが、私の力量を越える課題だった。これは論争の核心を理解することにはつながりません。是非、『世界』掲載の原論文を直接お読みください。
◆公共政策から見た自然エネルギー◆ 飯田哲也 『世界』2011.12月号
・原発のコストの問題
処分技術費が計算できないはずなのにコストに(安く)入っている。
原発は値上がり中
損害賠償は市場では引き受け不可能(民間の保険契約ができない―堤)
・将来へのつけを残す原発は撤退すべきだ
・代替電力は再生可能エネルギーを
天然ガス発電よりも節電発電を(節電発電とは、節電分を発電と考える面白い言葉―堤)
天然ガスは既に実働している。天然ガスに過度な期待はできない。
・自然エネルギーを
日本は風力発電と太陽光発電の適地
風力発電と太陽光発電の不安定性は克服できる。
設置数の増加で平準化が可能
天気予報で予測ができる。
太陽光発電設備は値段がぐんぐん低廉化している。
地熱発電はリスクがある。
小水力発電は、資源量に制約がある。
全量買い取り制度を
・原価計算は不透明 東電は10年間で6000億円も余計に不正な原価参入をしていた。
・送電は準公共財
・発電・売電は開放市場に
・発・送電分離しても害はない
・日本の電気料金は高い
・ヤラセメールでの公聴会は独占企業の地位濫用
◆経済学から見た自然エネルギー◆ 伊東光晴 『世界』2012.3月号
・総括原価方式による電気料金の決定について。社員の福利厚生は原価に入らないのに、入るかのような誤解がある。送電や発電は計算しやすいが、配電は計算しにくい。
・電力会社の独占を私は支持してはいない。支持しているように誤解されている。
・発・送電分離をどのようにするかが問題。
・分離分割してしまって、それぞれの電力会社が外国企業によって支配されるようになったら困る。
・飯田さんが、電力会社の独占を批判しながら太陽光発電の上乗せ買取価格を認めることは矛盾している。
・太陽光発電や風力発電の賦存量を言うとき、値段が抜けていては無意味。(買えないような高価では開発の余地があっても利用できない。―堤)
・ドイツは50年までに再生可能エネルギーを80%にすると言っているが、そんなことをしたらドイツの産業はエネルギーの高価格で競争力を失う。(今後40年間で価格が下がる可能性は大きいのではないか。―堤)
・太陽光発電の買取上乗せ価格は良くない。
普及効果は小さく、CO2削減効果も小さい。
地熱や天然ガスの方が良い。
太陽光発電のコストが将来も低下するか、不明。
このための費用は無駄になるかもしれない。
太陽光発電のコストは天然ガスの5倍。
平準化で不安定さが解決するというのは単純化しすぎる。
・電力会社の分離分割によって、電力の供給不足で儲けることを期待して、過少投資になるかもしれない。(品不足になれば商品の値段が上がる、という理屈は分かるが、それを目的に生産を控えるということは現実にあるのだろうか―堤)
・規制緩和は危ない。(確かに、電気のような生活必需品を完全に自由化することは危ないかもしれない―堤)
・日本の電気料金はEU諸国と比べて決して高くない。
・風力発電よりも太陽光発電の補助金の方が大きいのはウラがありそう。(こういう視点は全く考えてなかった。確かにウラがあることには気をつけなくてはならない。しかし、ウラの有無でもってすべてを疑ってかかることもおかしい。原発こそが最大のウラをほしいままにしてきたのではないだろうか―堤)
・電気料金は総括原価方式だから、事故災害の補償金も電気料金に組み込めない。
◆両者の論を読んでの感想◆
・飯田さんの文には東電に対する大きな怒りが感じられる。伊東さんも原発反対であることは、以前の論文で明らかだが、飯田さんほどの怒りのトーンは感じられない。
・飯田さんは太陽光発電に対する大きな期待があるが、価格が今後も低下し続けるという確証はない。
・ガスコンバインド発電に対して、飯田さんは講演会では「規模が大きくて市民が取り組むことはできない。市民が取り組めるという民主的な発電ではない」と批判していた。経済学者との論争では無意味かもしれないが、この視点は飯田さんの特徴だし、重要だと思う。
・飯田さんは、太陽光発電と風力発電を高く評価している。私も期待したいのだが、不安定さに対して、平準化と天気予報だけで大丈夫だろうか。台風が日本列島を直撃した時は、太陽光発電と風力発電が同時に広範囲にわたって稼働しない恐れがある。しかも、講演会では蓄電池の研究も必要ないと言われた。
・伊東さんは太陽光発電よりも地熱発電や天然ガスに期待している。地熱発電所の設置には時間がかかることが心配。それまでの過度期のための天然ガスなのだろうか。
太陽光発電はCO2の削減にはあまり寄与しないという理由が分からなかった。ドイツの経済学者が言う実例からの引用だったが。発電規模が小さいからなのか、製作段階でCO2を排出するということなのか。
・伊東さんが、太陽光発電への補助金のことで「裕福な家庭への補助金」と述べられたことはひっかかる。太陽光発電を設置している私も確かに毎日の食費に窮するという貧困家庭ではないが、かといって乗用車1台よりも安い太陽光発電の設置に対して、「裕福な家庭」だとは言われたくない。
・伊東さんは、「総括原価方式なので原発事故災害の補償費を電気料金に組み込めない」と述べておられるが、この指摘は正しいのだろうか。これまでの仕組みとしてはそうかもしれないが、東電は今から組み込もうとしているのではないか。組み込ませないで補償費を払うとすれば、(国の全面的な援助などは論外として)東電の歴代の役員の給料も退職金も全部吐き出してもらう必要があるのではないだろうか。伊東さんの力で是非それを実現してほしい。
◆公共政策から見た自然エネルギー◆ 飯田哲也 『世界』2011.12月号
・原発のコストの問題
処分技術費が計算できないはずなのにコストに(安く)入っている。
原発は値上がり中
損害賠償は市場では引き受け不可能(民間の保険契約ができない―堤)
・将来へのつけを残す原発は撤退すべきだ
・代替電力は再生可能エネルギーを
天然ガス発電よりも節電発電を(節電発電とは、節電分を発電と考える面白い言葉―堤)
天然ガスは既に実働している。天然ガスに過度な期待はできない。
・自然エネルギーを
日本は風力発電と太陽光発電の適地
風力発電と太陽光発電の不安定性は克服できる。
設置数の増加で平準化が可能
天気予報で予測ができる。
太陽光発電設備は値段がぐんぐん低廉化している。
地熱発電はリスクがある。
小水力発電は、資源量に制約がある。
全量買い取り制度を
・原価計算は不透明 東電は10年間で6000億円も余計に不正な原価参入をしていた。
・送電は準公共財
・発電・売電は開放市場に
・発・送電分離しても害はない
・日本の電気料金は高い
・ヤラセメールでの公聴会は独占企業の地位濫用
◆経済学から見た自然エネルギー◆ 伊東光晴 『世界』2012.3月号
・総括原価方式による電気料金の決定について。社員の福利厚生は原価に入らないのに、入るかのような誤解がある。送電や発電は計算しやすいが、配電は計算しにくい。
・電力会社の独占を私は支持してはいない。支持しているように誤解されている。
・発・送電分離をどのようにするかが問題。
・分離分割してしまって、それぞれの電力会社が外国企業によって支配されるようになったら困る。
・飯田さんが、電力会社の独占を批判しながら太陽光発電の上乗せ買取価格を認めることは矛盾している。
・太陽光発電や風力発電の賦存量を言うとき、値段が抜けていては無意味。(買えないような高価では開発の余地があっても利用できない。―堤)
・ドイツは50年までに再生可能エネルギーを80%にすると言っているが、そんなことをしたらドイツの産業はエネルギーの高価格で競争力を失う。(今後40年間で価格が下がる可能性は大きいのではないか。―堤)
・太陽光発電の買取上乗せ価格は良くない。
普及効果は小さく、CO2削減効果も小さい。
地熱や天然ガスの方が良い。
太陽光発電のコストが将来も低下するか、不明。
このための費用は無駄になるかもしれない。
太陽光発電のコストは天然ガスの5倍。
平準化で不安定さが解決するというのは単純化しすぎる。
・電力会社の分離分割によって、電力の供給不足で儲けることを期待して、過少投資になるかもしれない。(品不足になれば商品の値段が上がる、という理屈は分かるが、それを目的に生産を控えるということは現実にあるのだろうか―堤)
・規制緩和は危ない。(確かに、電気のような生活必需品を完全に自由化することは危ないかもしれない―堤)
・日本の電気料金はEU諸国と比べて決して高くない。
・風力発電よりも太陽光発電の補助金の方が大きいのはウラがありそう。(こういう視点は全く考えてなかった。確かにウラがあることには気をつけなくてはならない。しかし、ウラの有無でもってすべてを疑ってかかることもおかしい。原発こそが最大のウラをほしいままにしてきたのではないだろうか―堤)
・電気料金は総括原価方式だから、事故災害の補償金も電気料金に組み込めない。
◆両者の論を読んでの感想◆
・飯田さんの文には東電に対する大きな怒りが感じられる。伊東さんも原発反対であることは、以前の論文で明らかだが、飯田さんほどの怒りのトーンは感じられない。
・飯田さんは太陽光発電に対する大きな期待があるが、価格が今後も低下し続けるという確証はない。
・ガスコンバインド発電に対して、飯田さんは講演会では「規模が大きくて市民が取り組むことはできない。市民が取り組めるという民主的な発電ではない」と批判していた。経済学者との論争では無意味かもしれないが、この視点は飯田さんの特徴だし、重要だと思う。
・飯田さんは、太陽光発電と風力発電を高く評価している。私も期待したいのだが、不安定さに対して、平準化と天気予報だけで大丈夫だろうか。台風が日本列島を直撃した時は、太陽光発電と風力発電が同時に広範囲にわたって稼働しない恐れがある。しかも、講演会では蓄電池の研究も必要ないと言われた。
・伊東さんは太陽光発電よりも地熱発電や天然ガスに期待している。地熱発電所の設置には時間がかかることが心配。それまでの過度期のための天然ガスなのだろうか。
太陽光発電はCO2の削減にはあまり寄与しないという理由が分からなかった。ドイツの経済学者が言う実例からの引用だったが。発電規模が小さいからなのか、製作段階でCO2を排出するということなのか。
・伊東さんが、太陽光発電への補助金のことで「裕福な家庭への補助金」と述べられたことはひっかかる。太陽光発電を設置している私も確かに毎日の食費に窮するという貧困家庭ではないが、かといって乗用車1台よりも安い太陽光発電の設置に対して、「裕福な家庭」だとは言われたくない。
・伊東さんは、「総括原価方式なので原発事故災害の補償費を電気料金に組み込めない」と述べておられるが、この指摘は正しいのだろうか。これまでの仕組みとしてはそうかもしれないが、東電は今から組み込もうとしているのではないか。組み込ませないで補償費を払うとすれば、(国の全面的な援助などは論外として)東電の歴代の役員の給料も退職金も全部吐き出してもらう必要があるのではないだろうか。伊東さんの力で是非それを実現してほしい。
(堤静雄) (2012/03/13)