『通販生活』が面白い

 『通販生活』という雑誌をご存じだろうか.一年に春号,夏号および秋冬号の3冊が発行されている.商品の通信販売を目的にした冊子であるが,けっこうハードな話題を取り上げており真面目な雑誌のようである.例えば,2011年秋冬号では特集「脱原発時代の暖かい暮らし」を組んで,民主主義の問題として脱原発の論陣を張った.2012年の夏号では,「46年ぶりにやってきた原発のない夏」(2012年5月発行)を特集して,再稼働をねらっていた大飯原発周辺の断層を問題にするとともに,放射能に苦しむ福島の母子をなおざりにして原発再稼働に熱心なこの国のおかしさを糾弾している.

 この雑誌は3つの「忘れない」を読者にアピールしているという.商品注文を忘れないが第1の「忘れない」であり,通信販売を目的にした雑誌ではこれは当たり前である.後の2つの「忘れない」は,「福島」と「沖縄」である.「福島を忘れない」という姿勢は,上にあげた特集からも推察される通りである.「沖縄」については発売されたばかりの2013年春号に取り上げられている.

 考えてみれば,「福島」も「沖縄」も日本がかかえる政治問題の中で,最も厳しいかたちで矛盾があらわになっている問題である.このような鋭い矛盾のある政治課題を正面から取り上げる『通販生活』を応援したくなってしまう.2013年春号には,落合恵子氏と山田洋次監督の対談もあり,これも面白い.近日中に公開される最新作「東京家族」に関連して,映画作りの裏話や3.11あるいは原発事故との関連が語られている.

 『通販生活』の定価は,毎号180円.わが家では,2011年秋冬号を書店で買って来て,興味深く読ませてもらった.その号に紹介されていた商品を家内が購入して以来,連続して4号(2012年春,夏,秋冬および2013年春)がただで郵送されている.

(2013.1.10/E.M.)