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第4回 JSA福岡談話会

第4回 JSA福岡談話会の案内

今回の談話会では,分かったようで分からない問題を考えてみましょう。どうも制限のない情報と制限のある情報を明確に区別してじっくり考えることが必要のようです。

第4回<JSA福岡談話会>(オンライン)
日 時:6月30日(日) 午前10時〜
話 題:「モンティ・ホール問題について」 
問題の解説(pdf)
話題提供:押川元重氏

様 式:ZOOMによるオンライン開催
ZOOM情報:ミーティングID: 815 151 6469  パスワード: 3KsYt4
以下をクリックすれば簡単にミーティングに入れます.
https://us04web.zoom.us/j/8151516469?pwd=N1dydmMxTk85eVRkenNxUFhJUE1YUT09

【問題の解説】

 モンティ・ホール問題は、アメリカの視聴者参加のテレビクイズ番組を契機として出てきました。会場に大きな3つの箱が置かれ、司会者が番組参加者に「これら3つの箱の1つに車が入っています。当ててください。」と言い、番組参加者が1つの箱を選びました。司会者は選ばれなかった箱の1つを開けて、中に車が入っていないことを示した後で、「あなたが選んだ箱とまだ開けていない箱を取り替えてもよいです。どうしますか?」と言いました。番組参加者は交換を望みませんでしたので、司会者は選んだ箱を開けましたが、その箱には車が入っていませんでした。司会者は「実は、箱を交換したほうが、車が入っている確率が2倍だったのです。」と言いました。番組終了後に、司会者が最後に言った言葉は誤っていると、高名な学者を含めた議論の的になりました。
 これは選択枝が3つの当てるゲームの問題です。この問題の枠組みの中だけでなく、さらに一般化した枠組みによってしか、説得性のある解明はできません。選択枝も多く、等しい確率ではない当てるゲームを考えることが必要です。選ばれた箱は開けることができません。この箱を開けると問題そのものがなりたたないからです。つまり、選ばれた箱からは情報を得ることができません。開けて車が入っていないことが確認された箱は3つの箱の中から取り出されたのではなく、選ばれなかった2つの箱の中から取り出された箱です。そうした意味で、制限された情報です。制限の無い情報と制限の有る情報の違いに注目することが必要です。制限の無い外れ情報(全体)は、確率を用いて情報処理されます。制限のある外れ情報(部分)は、その制限を条件とする条件付き確率を用いて情報処理されなければなりません。このような全体と部分との間の整合性は重要です。確率は数の計算によって取り扱われます。数の計算は括弧の内の計算と括弧の外の計算は同じ計算規則のもとで行なわれるように、全体と部分の整合性が前提です。したがって、確率を用いる情報処理は全体と部分の整合性が前提です。確率に関わる情報処理における全体と部分の整合性は、一般的かつ具体的に検討が必要ですが、ここではそれを前提として説明します。
 モンティ・ホール問題に戻ります。選ばれた箱を箱g、開けられて車が入っていなかった箱を箱v、残りの箱を箱rと呼ぶことにします。また、箱g、箱v、箱rに車が入っている確率をそれぞれp、q、rとします(p+q+r=1)。繰り返しますが、箱vに車が入っていなかったのは、3つの箱g、v、rのなかでの箱vにではなく、2つの箱v、rに制限したなかで箱vに車が入っていなかったという制限された情報ですから、2つの箱v、rを条件とする条件付き確率で情報処理しなければなりません。2つの箱v、rを条件とする条件付き確率では、車が入っている確率はそれぞれq/(1-p)、r/(1-p)です。それが0、1になります。それをもとの確率にもどすと、0、1-pになります。したがって、3つの箱g、v、rに車が入っている確率はそれぞれp、0、1-pになります。3つの箱に車が入っていることが等確率で保証されるときは、p=1/3ですから、箱rに車が入っている確率1-p=2/3は、箱gに車が入っている確率p=1/3の2倍になります。
 この考えかたは、制限された情報は条件付き確率で情報処理をするという全体と部分の整合性がもとになっています。しかもこの考え方はシミュレーションの結果とも合致しています。全体と部分の関係はさまざまなことがらについて存在します。一般的に物事を思考する哲学が軽視されるようになった今、あらためて全体と部分についての関係を考える契機の1つにならないでしょうか。(以上,押川元重)