本科学者会議60周年記念「九州沖縄シンポジウム」参加報告

 1月24日(土)の午後,標記のシンポジウムが対面(琉球大学会場)およびオンライン(Zoom)で開催され,40数名が参加した.シンポジウムのテーマは「戦争に向かわせない,平和を築く私たち」で,第1部(九州・沖縄からのレポート)と第2部(「平和をどう創造できるか~戦争体験と博物館と私~」)の2部構成で行われた.
 第1部では3名の方からの講演があった.最初は,宮崎県平和委員会の藤田元義氏から「宮崎県の軍備増強 新田原基地F35B戦闘機配備,えびの駐屯地長射程ミサイル配備」について報告された.宮崎県には6つの自衛隊基地・駐屯地が存在し,それぞれの特徴・役割や配備されている装備や施設について説明があり,問題点を指摘された.例えば,航空自衛隊新田原基地には昨年,臨時F35B飛行隊(仮称)が発足し,短距離離陸,垂直着陸可能なステルス戦闘機F35Bが配備されている.垂直着陸時は,騒音が激しく時間も長いので,住民から訓練を強行しないでほしいという声が上がっている.また,米国防総省の2018年度年次報告書には同機の欠陥が指摘されており,また米本土での墜落事故もあり,1機222億円もする同機の配備には多くの危険性が伴う.また,新田原基地では昨年3月に基地の井戸から国の暫定目標値の11倍のPFAS(有機フッ素化合物)が,基地周辺の民家の井戸から18倍のPFASが検出され,問題となっている.また,PAC3(地対空誘導弾システム)などの展開訓練のために基地の拡張が予定され,用地取得が計画されている.
 また,陸上自衛隊のえびの駐屯地では,2026年度に大型弾薬庫5棟の建設と長射程ミサイル「高速滑空弾」の配備,運用部隊の新設が予定されている.昨年11月に平和委員会は,学習会や地元住民との懇談会を開催して,この問題を宣伝し,反対組織の結成を目指している.講演を通して宮崎県においても政府・自民党が進める大軍拡・防衛力増強の実際に進行している状況がよく理解できた.
 二つ目の講演は,元佐賀大学理工学部教授の豊島耕一氏による「戦争を予防し警察も変える非暴力直接行動―佐賀空港軍事化反対運動と弾圧について―」というテーマで発表された.佐賀空港へのオスプレイ配備の経緯と反対運動について紹介され,特に2023年6月に防衛省が佐賀駐屯地建設工事を着工した際,住民・市民が自発的な阻止直接行動,2024年1月の直接行動の再開以降の「早朝行動」の状況が説明された.その後に非暴力直接行動の意義・効用および国内外での非暴力直接行動の紹介があった.工事ゲートでのダンプ阻止行動の参加者の不当逮捕の状況について写真を交えて詳しく報告された.豊島氏が,「非暴力」の重要性とともに「阻止行動の参加者は,阻止行動の現場で遭遇するすべての人に対して,敬意を持って接しなければならない.」と述べられたことが印象的であった.
 第1部の最後は,JSA平和問題研究委員会の亀山統一氏から「浦添新軍港の建設はやめよう―海を守ろうという平和運動―」というテーマでの講演であった.米軍那覇港湾施設は1974年に移設条件付での全部返還が日米両国政府間で了承され,1995年に浦添ふ頭地区への移設が両国政府間で合意された経緯がある.以後那覇軍港の無条件返還および浦添「移設」反対の県民運動の長い歴史が始まる.那覇軍港は,狭いうえに水深が浅いため,大型船が入れない,クレーンなどの設備もないのであまり利用されていない.浦添への「移設」というより,沖縄の基地機能に欠けている巨大軍港を新設するというのが実態である.反対運動の当初は「環境」についての意識は低かったが,近年,浦添「移設」に伴う自然・環境破壊の問題がクローズアップされてきた.2023年に浦添軍港案を両政府が合意し,翌24年に環境アセスメント準備書,25年に環境アセスメント方法書が公表された.亀山氏が世話人「浦添西海岸の未来を考える会」はこの「方法書」には「埋立による土地造成後に軍港として使用されたときの環境影響の評価が一切含まれていない」ことを指摘し,沖縄県環境部に「軍港をアセスに入れるように事業者求める」ことを申し入れた.このように那覇軍港の浦添「移設」反対の県民運動は平和運動と地域,環境の取り組みを結合して進められている.  
 沖縄県の米軍基地の負担軽減というスローガンと実態の乖離を改めて考えさせられる講演であった.
 第2部では,佐喜眞道夫氏(佐喜眞美術館)から,「アートと戦争」,西由良氏(「あなたの沖縄」代表から「日常から沖縄戦を語り継ぐ~体験していない私たちにできること~」,鈴木陽子氏(沖縄愛楽園交流会館)から「見えなくされた人々の沖縄戦とその後」,平良次子氏(対馬丸記念館)から「平和学習の意義と博物館の役割」の発表が行われたが,その内容・感想については紙面の都合で割愛する.多様な観点・立場から「平和と戦争」を考える良いシンポジウムであった.
                                    (報告者:出口博之)