福岡核問題研究会と日本科学者会議福岡支部幹事会の連名で声明「第7次エネルギー基本計画は問題だらけで実効性は疑問」を発出しました
第7次エネルギー基本計画は問題だらけで実効性は疑問
福岡核問題研究会/日本科学者会議福岡支部幹事会
政府は,中長期のエネルギー政策の方向性を示す第7次エネルギー基本計画(エネ基)を閣議決定した.このエネ基は,福島原発事故の教訓を忘れ,持続可能性など総合的観点に欠けたものである.一言でいえば原子力,火力に偏重した,問題の多い基本計画であると言わざるをえない.以下六点に渡って問題点を指摘する.政府においては,私たちの指摘を真摯に受け止めて日本国民の将来に渡って安全と環境保全を保証できるエネルギー基本計画に改訂されることを要望する.
第一の問題は,省エネルギー(省エネ)についての重要性は指摘しているものの,省エネを進める具体的な推進策がないことである.省エネによるエネルギー需要削減は,2050年カーボンニュートラルを実現する上で最も重要なものである.技術革新や産業部門の効率化のほかにも国民一人ひとりの意識改革が必要である.
第二の問題は,再生可能エネルギー(再エネ)の導入目標があまりにも低いということである.エネ基によれば,2040年度の再エネの目標比率は40~50%であるという.前回の2030年度の再エネの目標比率は36~38%であったので,10年間の再エネ導入比率は4~12%だけの増加となる.余りにも低い目標ではないか.さらに脱炭素がうまくいかない場合は,2040年度の再エネの目標比率を35%にするという.その場合は,2040年度の火力の比率が45%となり,2030年の比率(41%)より4%増加することになる.脱炭素化への逆行である.われわれは,日本の地理的条件や技術力を考えれば,より高い目標を設定し,積極的に導入を進めることができると考える.
第三の問題は,福島第一原発事故以来これまで「可能な限り依存度を低減する」と言っていた原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ「最大限活用する」としていることである.福島第一原発事故の教訓を忘れてしまったのかと言いたい.原発には過酷事故が確率は低くても起きることを忘れてはならない.昨年1月の能登地震で原発の過酷事故が起きなかったのは,珠洲原発計画が地元住民らの根強い反対運動により2003年12月に凍結されたからである.凍結されていなければ,福島事故と同じような過酷事故がありえた.原発には過酷事故のリスクだけでなく,稼働すれば必ず出てくる放射性廃棄物の後処理を未来の人類に丸投げするものである.また,原発への投資は,同額を太陽光など再エネや省エネに投資した場合と比べ温室効果ガス削減量は数分の1でしかないことが分かっている.
第四の問題は,エネ基では水素・アンモニアやCCS(二酸化炭素回収・貯蔵)技術を「脱炭素化の鍵となる選択肢」として位置づけ,その導入を推進する方針が示されている.水素・アンモニアは将来のエネルギー源として期待されるが,その製造コストや輸送コスト,安全性,資源調達の問題など多くの課題がある.また,CCS技術については,その実現可能性やコスト,CO2貯蔵の安全性,環境への影響など,様々な課題を解決する必要がある.水素・アンモニアの導入には慎重な検討を行い,CCS技術の開発には慎重な姿勢を保つことが必要であろう.
第五の問題は,計画案の策定過程において国民の意見や参加が十分に反映されていないことである.エネルギー政策は,国民生活に大きな影響を与えるものであり,その決定プロセスには,より多くの国民が参加できるような仕組みづくりが求められる.確かに,今回のエネ基案に対してパブリックコメントが募集され,4万を超える意見が寄せられた.その中で「安全性に問題があり原発利用を推進すべきではない」(176)という複数の意見に対して「エネルギー基本計画(案)に、原子力の安全性やバックエンドの進捗に関する懸念の声があることを真摯に受け止める必要がある旨を明記いたしました」という回答のみで済ませるのは,あまりにも安易すぎる.エネルギー政策は社会全体で議論し,合意形成を図ることが重要であると考える.
第六の問題は,エネ基には国際協力に関する記述が少ないことである.地球温暖化問題は国際社会全体で取り組むべき課題であり,日本が積極的に国際協力を行うことが求められる.気候変動問題の解決には,日本は先進国として責任を果たすとともに,発展途上国への技術支援や資金援助などの貢献が求められるが,そのような記述がエネ基の中にはない.

